インドでの仕事をきっかけに、少しずつ加工の仕事が増えてきました。
それまでは「今月をどう乗り切るか」だけを考える毎日でしたが、ようやく少し先の未来を考えられるようになってきたのです。
仕事が増えることは、本当にありがたいことでした。
しかし、その一方で、新たな不安も生まれていました。
創業時に導入した中古のマシニングセンタです。
その一方で、古い機械はいつ故障してもおかしくありません。
「もし今、この機械が止まったら、お客様との約束が守れない。」
そんな不安を抱えながら仕事をしていました。
そこで私は、新品の小型マシニングセンタを導入する決断をしました。
創業当初はリースの審査にも通りませんでしたが、少しずつ仕事を積み重ね、信用を得られたことで、ようやくリース契約が認められました。
ただし条件がありました。
頭金50万円。
当時の私にとって決して小さな金額ではありません。
それでも迷いはありませんでした。
仕事を続け、お客様との約束を守るために必要な投資だと考えたからです。
新品のマシニングセンタが工場へ搬入された日。
もちろん嬉しかったです。
でも、それ以上に感じたのは安心でした。
「これで仕事を止めずに済む。」
新品の機械がくれたのは、高性能ではありません。
安心して、お客様との約束を守り続けられるという自信でした。
新品のマシニングセンタを導入したことで仕事の幅が広がり、お客様からの依頼も少しずつ増えていきました。
そして、その流れに乗るように、3か月後にはワイヤーカット放電加工機も導入しました。

この機械は、前職で最初に覚えた加工機でもあります。
当時、私はワイヤーカット放電加工の技能検定1級を取得しました。
しかし、その頃は資格を持っているだけで仕事が増えるわけでも、給料が上がるわけでもありませんでした。
正直、「資格なんて取っても意味がない」と思ったこともあります。
ところが、自分で会社を経営するようになって、その考えは変わりました。
ワイヤーカットを導入した時、前職で身につけた技術と、技能検定で学んだ知識が、そのまま仕事に生かされたのです。
若い頃は意味がないと思っていた努力が、何年も経って会社を支えてくれました。
技術は、一度身につければ誰にも奪われません。
だから私は今でも、新しいことを学び続けることを大切にしています。
そして2012年6月。
私は会社を法人化しました。
創業してから決して順風満帆ではありませんでしたが、一歩ずつ積み重ねてきた努力が、少しずつ形になってきたことを実感していました。
設備も整い、仕事も少しずつ増えてきました。
創業当時は、目の前の仕事をこなすだけで精一杯だった私も、ようやく少し先の未来を考えられるようになっていました。
振り返ると、あの日、新品の機械が私にくれたのは、性能ではありませんでした。
どんな時でも、お客様との約束を守り続けられるという「安心」でした。
そして、その安心は、少しずつ会社への信用となり、次の仕事へ、さらに次の挑戦へとつながっていきました。
私は改めて思います。
技術は、一度身につければ誰にも奪われない。
そして、その技術を信じて積み重ねた努力は、必ずどこかで自分を支えてくれる。
あの頃には想像もできませんでしたが、この頃から会社は少しずつ、一人ではできない仕事に挑戦するようになっていきます。
一人では、会社は大きくできない。
そのことを、私はこれから身をもって学ぶことになります。
― 第5話へ続く ―

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