仕事は相変わらず順調でした。
加工だけでなく、ロボットプログラムや設備の立ち上げの仕事まで任せていただけるようになり、私は出張へ出ることも増えていました。
加工の仕事をいただいている大切なお客様からのご依頼でした。
「できません」とお断りすることはできず、その期待に応えたいという思いで、私は全国へ出張するようになりました。
工場では、Aさんが加工の中心となって頑張ってくれていました。
しかし、仕事は増え続け、一人ではとてもこなしきれません。
そこで、20代前半のB君を採用しました。
加工は未経験でしたが、とても真面目で、いつもニコニコしている青年でした。
高校時代はサッカーをしていたそうで、体力もあり、素直で一生懸命でした。
「きっと良い職人になってくれる。」
私はそう期待していました。
Aさんに仕事を教わりながら、少しずつ成長してくれれば、それで十分だと思っていたのです。
ところが、入社して半年ほど経った頃でした。
私はいつものように出張先にいました。
その時、B君から一本の電話がかかってきました。
「社長……もう辞めたいです。」
突然の言葉に、私は驚きました。
理由を聞くと、B君はAさんから厳しく当たられ、ついには暴力を振るわれたことで、辞める決心をしたと言いました。
私は言葉を失いました。
Aさんは仕事には厳しい人でした。
一方で、人との接し方には不器用なところがありました。
だからこそ、二人だけを工場に残して出張へ出てしまったことを、心から後悔しました。

仕事を断らないことが、お客様との信頼につながる。
当時の私は、その思いだけで走り続けていたのかもしれません。
ですが、その一方で、工場では社員に十分目を配ることができていませんでした。
「自分が工場にいれば、防げたかもしれない。」
その思いは、今でも私の心に残っています。
B君が辞めたのは、Aさんだけの責任ではありません。
社長である私の責任でした。
会社が大きくなれば、仕事は増えます。
設備も増えます。
しかし、それ以上に大切なのは、人でした。
私はこの出来事を通して、会社で一番難しいのは、人との関わりなのだということを痛感しました。
この出来事は、私の経営に対する考え方を大きく変えるきっかけとなりました。

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