Aさんが加わってから、会社は少しずつ変わり始めました。
仕事は順調に増え、お客様から新しい依頼をいただく機会も多くなっていきました。
工場にはマシニングセンタが2台、ワイヤーカット放電加工機が1台。
忙しい時には、古いNCフライスまで動かすこともありました。
工場にある機械は、できる限りすべて使って仕事をこなしていました。
私は毎朝6時頃に起き、20分ほど散歩をすることから一日が始まります。
当時は営業に回ることもほとんどなく、朝から図面を確認し、加工プログラムを作り、材料や段取りを準備していました。
Aさんは朝早くから加工を始めます。
私は検査や納品を済ませ、夕方からは自分が加工機の前に立ちました。
気が付けば夜中の12時を過ぎることも珍しくありません。
家に帰るのは、いつも12時半頃でした。
翌朝になると、またAさんが加工を始める。
そんな毎日の繰り返しでした。
マシニングセンタ2台とワイヤーカット放電加工機1台は、一日に数時間しか止まることがありませんでした。
昼も夜も、機械が動き、材料を削る音が工場中に響いていました。

最新のマシニングセンタは、段取り時間を大幅に短縮し、加工ミスも減らしてくれました。
ワイヤーカット放電加工機のおかげで、それまで難しかった複雑な形状の加工も対応できるようになりました。
設備が増えたことで、お客様からいただける仕事の幅も大きく広がっていったのです。
以前は、売上を確保するために利益の少ない仕事でも無理をして受けていました。
仕事を選ぶ余裕などありません。
しかし、この頃になると状況は大きく変わりました。
ありがたいことに、お客様から次々と仕事をいただけるようになり、無理をして安い仕事を受けなくても会社が成り立つようになったのです。
利益も大きく伸びていきました。
借金や機械のリース代を、以前のように毎日気にすることも少なくなりました。
少し資金に余裕ができると、起業するときに父や親戚から借りたお金を返すことができました。
そして、私が一番嬉しかったのは別のことでした。
起業してからというもの、妻には心配ばかりかけていました。
生活費のこと、お金のこと、将来のこと。
不安ばかりだったと思います。
それでも文句一つ言わず、私を支えてくれました。
会社が少しずつ軌道に乗り、ようやく家庭に十分な生活費を入れられるようになった時、心からホッとしました。
「ああ、これで少しは安心してもらえる。」
そのことが、本当に嬉しかったのです。
仕事は本当に忙しい毎日でした。
納期に遅れれば、お客様からの仕事は減ってしまいます。
だから、とにかく納期との戦いでした。
必死でした。
でも、その忙しさは苦しいものではありませんでした。
仕事がある。
お客様に必要としていただける。
仲間と一緒に会社が成長していく。
あの頃は、それが何より幸せでした。
しかし、毎日がむしゃらに働き続ける中で、ふと考えることがありました。
「この忙しさは、いつまで続くのだろう。」
「この仕事は、いつか終わってしまうのではないか。」
そんな不安が、少しずつ心の中に生まれてきたのです。
その時の私は、まだ知る由もありませんでした。
会社には、次の大きな試練が待っていることを。
― 第7話へ続く ―

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