第23話では、
「機械をフルで回せば、月にこれくらい売れる。」
と言われていたものの、
実際にはそんな計算通りにはいかなかった、
という話を書きました。
では実際に、
町工場はいつ機械を増やせばいいのか。
私自身、
最初は中古のマシニングセンタと、
中古のNCフライスから始めました。
その後、
仕事が増えるにつれて、
新しい機械も入れてきました。
その経験から今思うのは、
機械を買えば、それだけで売上が増えるわけではない。
ということです。

最初に機械を増やそうと思った理由
新しい機械を増やそうと思ったのは、
仕事が増えて、
忙しくなってきた頃でした。
最初に使っていたのは、
中古のマシニングセンタと、
中古のNCフライスです。
仕事が増えること自体は、
ありがたいことです。
でも、
別の不安も出てきました。
「この機械が壊れたらどうするんだろう。」
中古機械なので、
いつ故障するか分かりません。
納期のある仕事を抱えている時に止まれば、
お客様に迷惑をかけます。
仕事が増えたことと、
故障への不安。
この二つが、
新しい機械を増やそうと思った大きな理由でした。
小型マシニングを入れて、仕事がやりやすくなった
買って良かったと思っている機械の一つが、
小型のマシニングセンタです。
工具交換がしやすく、
どのポットにどの工具が入っているかも確認できます。
単品加工では、
工具を入れ替えたり、
段取りを変えたりすることが多いので、
こうした使いやすさは大きなメリットでした。
機械を入れ替えるというと、
加工速度や精度ばかりに目がいきます。
でも実際には、
段取りが早くなる。
操作がしやすくなる。
こういう部分も、
生産性には大きく影響します。
ワイヤー放電加工機は、使う仕事があったから買った
その後、
ワイヤー放電加工機も入れました。
これは、
「この仕事に使いたい。」
という目的がはっきりしていました。
ワイヤー放電加工機は、
複雑な形状を加工できます。
今では、
ロボットハンドの爪などを作る時にも便利です。
また、
ワイヤー加工は加工時間が長いので、
ワイヤーを動かしている間に、
自分はマシニングを使うことができます。
一人で複数の機械を動かせるので、
仕事の幅も広がりました。
機械を増やしたことで、
単純に台数が増えたのではなく、
自分一人でできる仕事の種類も増えた。
これは、
設備投資をして良かったところです。
「少し早く買いすぎたかな」と思ったこともある
小型のマシニングセンタを買って、
それほど間を空けずに、
ワイヤー放電加工機も買いました。
その時は、
「ちょっと早すぎたかな。」
と思ったこともあります。
どちらも安い買い物ではありません。
しかも、
どちらもリース契約でした。
起業当初はリース審査に落ちましたが、
この時は審査が通りました。
マシニングセンタは、
頭金50万円を入れる条件でした。
毎月の支払いは増えます。
だから、
機械を入れた時は、
うれしいだけではありませんでした。
「買った以上、きちんと使わないといけない。」
という気持ちもありました。
結果的には、
加工できる仕事の幅が広がったので、
入れて良かったと思っています。
機械を増やせば、人も必要になる
設備投資を考える時に、
もう一つ大事なことがあります。
それは、
その機械を誰が動かすのか。
ということです。
機械を1台増やせば、
その分だけ仕事を増やせるように見えます。
でも実際には、
段取りをする。
プログラムを作る。
材料を準備する。
加工する。
測定する。
こうした仕事をする人も必要です。
場合によっては、
機械を増やせば、人も増やさなければなりません。
私の知り合いの会社でも、
新しい機械を入れたものの、
人が入ってこなくて困っている会社があります。

機械はある。
仕事もある。
でも、
動かす人がいない。
これでは、
せっかく設備投資をしても、
機械の能力を十分に使えません。
だから今は、
機械を買う時には、
「この機械を誰が動かすのか。」
そこまで考える必要があると思っています。
今は、増やすより入れ替えになる
現在、
うちの加工工場は、
もうほとんどいっぱいです。
これ以上機械を置くスペースもありません。
そのため、
今後設備投資をするとしたら、
機械を追加するというより、
古い機械との入れ替え
になると思います。
ただ、
うちには今でも、
1991年製のマシニングセンタ
があります。
かなり古い機械ですが、
まだ使えています。
故障が頻繁に出るようになれば、
入れ替えを考えると思います。
でも、
今のところはその予定はありません。
使っていて思うのは、
古い機械はシンプルで丈夫だな。
ということです。
新しい機械だから良い。
古い機械だからダメ。
私は、
そんなに単純ではないと思っています。
買う前に、今ある機械を使い切っているか
もし今、
「機械を増やした方がいいですか?」
と聞かれたら、
私はまず、
こう考えます。
今ある機械の能力を、本当に出し切っているか。
もっと段取りを短くできないか。
機械が止まっている時間を減らせないか。
加工する順番を変えられないか。
一人で複数の機械を動かせないか。
人の配置を変えられないか。
まだできることがあるのに、
先に新しい機械を買ってしまえば、
今ある機械も、
新しい機械も、
十分に使えない可能性があります。
だから私は、
「もっと今ある機械を回す方法はないか。」
そこを考えてから、
次の設備投資をした方がいいと思います。
機械を買えば売上が増える、とは限らない
新しい機械には、
魅力があります。
加工速度が速い。
精度が高い。
段取りが楽。
今までできなかった加工ができる。
でも、
機械を入れた瞬間に、
仕事が増えるわけではありません。
仕事がなければ、
機械は止まります。
動かなくても、
リース代や返済は続きます。
そして、
仕事があったとしても、
動かす人がいなければ、
その能力を使えません。
だから今なら、
設備投資をする前に、
少なくとも、
「本当にこの機械が必要なのか。」
「今ある機械ではできないのか。」
「この機械を使う仕事があるのか。」
「この機械を動かす人がいるのか。」
この四つは考えます。
私自身、
機械を増やしたことで、
できる仕事は増えました。
設備投資をして良かったと思っています。
でも、
機械を増やせば、売上も利益も自動的に増える。
そんなに簡単ではありません。
今ある設備を使い切る。
そのうえで、
今の設備では足りない理由がはっきりした時に、
次の機械を考える。
設備投資は、新しい機械を選ぶところからではなく、今ある機械をどう使うかを考えるところから始まる。
16年近く町工場をやってきて、
私はそう思っています。

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