町工場を一人で始めると、最初は何でも自分でやります。
見積もり。
材料の手配。
プログラム。
加工。
測定。
納品。
営業。
経理。
最初はそれでも何とか回します。

でも、どこかで、
「このまま一人で続けるのか。」
「誰かに仕事を任せるのか。」
という判断が必要になります。
私の場合は、
「仕事が増えすぎて、一人では回らなくなった。」
という理由ではありませんでした。
むしろ逆でした。
加工の仕事だけでは、この先やっていけない。
そう思ったことが、人を増やすきっかけでした。
加工の仕事だけでは、やっていけないと思った
私は一人で加工の仕事をしていました。
でも、
思ったように売上は上がりませんでした。
仕事をしても利益が残らない。
このまま加工だけを続けても、会社はなかなか良くならない。
そう感じるようになりました。
そこで考えたのが、
自分は以前やっていたロボットプログラムの仕事へ戻ろう。
ということでした。
ただし、自分がロボットの仕事へ行けば、
工場の加工をする人がいなくなります。
だから、
今ある加工の仕事を任せられる人を一人入れて、自分は別の仕事をする。
そう考えました。
最初からお客様がいれば、違ったのかもしれない
今振り返ると、
もし独立した時点で、
ある程度仕事を出してくれるお客様がいて、
それなりの売上が見込めていたなら、
ここまで悩まなかったのかもしれません。
でも私には、
そういうお客様がいませんでした。
加工の仕事を続けるだけでは厳しい。
だから、
自分が外へ出て別の売上を作るしかない。
そういう状況でした。
お金をきちんと払えるのかという怖さはあった
人に仕事を任せると決めても、
当然、不安はありました。
一番大きかったのは、
働いてもらった分を、きちんと払えるのか。
ということです。
一人でやっている時は、
自分の取り分を我慢することはできます。
でも、
人に働いてもらえば、
そうはいきません。
仕事が少なくても、
売上が思うように上がらなくても、
働いてもらった分は支払わなければなりません。
そこは、かなり不安でした。
最初に加工を任せたのは、バリバリの経験者だった
最初に一緒に働いてもらった人は、
未経験者ではありませんでした。
バリバリ加工ができる経験者でした。
もともと加工の仕事で付き合いがあり、
どのくらい仕事ができる人なのかも知っていました。
だから、
一から教育する必要はほとんどありませんでした。
私にとって重要だったのは、
「この人なら一人で加工を任せられる。」
ということでした。

一人で全部できる人が必要だった
私がロボットプログラムの仕事へ戻る以上、
工場にずっといることはできません。
だから、
加工だけではなく、
ある程度一人で仕事を回せる人でないと困ります。
最初に一番心配していたのも、
「自分がいない時に、一人で全部できるか。」
ということでした。
その点では、
経験者だったことが本当に助かりました。
売上に応じた報酬で仕事をしてもらった
その人とは、
売上の何割を報酬として支払う、
という形で仕事をしてもらいました。
仕事をすればするほど、
本人の報酬も増える形です。
本人もお金を稼ぎたい人だったので、
とにかく仕事をしてくれました。
今振り返ると、
もう少し歩合の割合を低くしておけばよかった。
と思う部分もあります。
ただ、当時は、
まず工場を止めずに回してくれる人が必要でした。
教える時間は、ほとんどかからなかった
最初から経験者だったので、
教育にはそれほど時間はかかりませんでした。
最初に機械の操作を少し説明したくらいです。
それ以外は、
ほぼ任せられました。
よく、
「人を入れたけど、自分でやった方が早い。」
という話があります。
私の場合は、
ベテランだったので、
そう思うことはほとんどありませんでした。
これはかなり助かりました。
人を一人増やしたことで、自分はロボットの仕事へ戻れた
一人に加工を任せられるようになったことで、
私はロボットプログラムの仕事へ戻ることができました。
それだけではありません。
工場の加工も、
一人でやっていた時より早く製品が上がるようになりました。
さらに、
ロボットプログラムの仕事へ行った先の会社から、
加工の仕事をもらえることもありました。
つまり、
一人に加工を任せたことで、自分が外へ動けるようになり、新しい仕事も増えた。
ということです。

売上は増えた。でも支払いも増えた
人を増やしたことで、
売上は増えました。
ただ、
売上が増えれば、そのまま利益も増えるわけではありません。
歩合で支払っていたので、
仕事が増えれば支払いも増えます。
工具代。
材料代。
そういう費用も増えました。
そこで、
売上が増えることと、利益が増えることは同じではない。
ということを、より強く意識するようになりました。
一番増えた仕事は「お金の計算」だった
人を増やしたことで、
増えた仕事もありました。
それが、
お金の計算です。
売上はいくら。
報酬はいくら。
材料代はいくら。
工具代はいくら。
最終的にいくら残るのか。
一人でやっていた時より、
考えることが増えました。
人を増やすということは、
単純に作業者が増えるだけではありません。
経営の仕事も増える。
ということだと思います。
最初のうちは、技術力を優先した方がいいと思う
もし、
「技術力が高い人」と
「人柄がいい人」
どちらを選びますか?
と聞かれたら、
私は最初は、
技術力だと思います。
特に、
会社がまだ小さく、
余裕がない時は、
一人で仕事を任せられる人の方が助かります。
もちろん、
会社に余裕が出てきたら、
人柄を重視する部分も大きくなると思います。
でも、
最初の一人。
二人。
そのあたりは、
やはり即戦力は大きいです。
長く一緒に働けそうな人とは
私が、
「この人なら長く一緒に働けそうだな。」
と思うのは、
大変な仕事でも、嫌な顔をせずにやってくれる人です。
会社には、
楽な仕事だけではありません。
面倒な仕事。
急ぎの仕事。
やりにくい仕事。
どうしても出てきます。
そんな時に、
毎回不平不満ばかり言われると、
経営する側もかなり疲れます。
だから私は、
不平不満ばかり言う人は避けたい
と思っています。
一人で続けた方が向いている人もいる
会社を大きくすればいい。
人を増やせばいい。
私は、そうは思いません。
人が増えれば、
当然、人間関係も増えます。
話し合いも必要です。
注意することもあります。
相談を受けることもあります。
だから、
人と話すのが好きではない人。
人間関係が苦手な人。
そういう人は、
一人で続ける方が合っている場合もあると思います。
一人でやることが悪いわけではありません。
自分に合ったやり方を選んだ方がいいと思います。
社長は何人まで現場に入るべきか
「社員が何人になったら、社長は現場を離れるべきですか?」
という話もあります。
でも私は、
人数ではないと思います。
20人くらいいても、
現場で仕事をしている社長はいます。
逆に、
人数が少なくても、
営業や経営に集中する社長もいます。
会社によって違います。
自分がどこにいた方が、
会社にとって一番いいのか。
そこを考えればいいと思います。
人を増やすタイミングは難しい
人を増やすタイミングは、本当に難しいです。
理想は、
仕事が増えてから、すぐ人を入れる。
だと思います。
でも、
実際には、
「募集したらすぐ人が来る。」
とは限りません。
むしろ、
求人を出しても応募が来ないことがあります。
だから、
知り合いのつてで紹介してもらうことも多いと思います。
仕事が増えてから探すと遅い。
でも、
仕事がないうちに人を入れれば、
支払いの負担が重い。
ここは、本当に難しいところです。
今からもう一度やるなら、採用は常に慎重にする
もし、
今からもう一度会社を始めるなら、
私は採用をもっと慎重にすると思います。
一人目だけではありません。
二人目。
三人目。
何人目でも、
採用は常に慎重にする。
そう思っています。
「忙しいから、とりあえず誰でもいい。」
という採用は、
やめた方がいいと思います。
経験者なら、何をしてきたかを見る
経験者を採用するなら、
一番確認したいのは、
これまでどんな加工をしてきたか。
ということです。
マシニングができる。
旋盤ができる。
それだけではありません。
どんな材質を削ってきたのか。
どんな精度の仕事をしてきたのか。
単品が多いのか。
量産が多いのか。
段取りから全部できるのか。
そこまで見た方がいいと思います。
人を増やすのは、仕事が増えた時だけではない
私の場合、
最初に人を増やした理由は、
仕事が増えたからではありませんでした。
加工だけでは厳しい。
だから自分はロボットプログラムへ戻る。
その間、
加工を任せられる人が必要だった。
それが理由でした。
つまり、
自分が次の仕事へ進むために、人を増やした。
ということです。
結果として、
それが会社の仕事を増やすきっかけにもなりました。
町工場は、いつ人を雇うべきか
最後に、
「町工場はいつ人を雇うべきですか?」
と聞かれたら、
私は、
「何人必要か」より、「その人に何を任せたいのか」を考えた方がいい。
と答えると思います。
私の場合は、
一人に加工を任せたことで、
自分はロボットの仕事へ戻ることができました。
そして、
その仕事から新しい加工の仕事も生まれました。
人を増やすことは、
単純に人手を増やすことではありません。
自分が次の仕事へ進むための選択肢にもなる。
私は、最初に人へ仕事を任せた時に、
それを学びました。

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