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第16話|町工場で独立するにはいくら必要?|1500万円で始めた私の設備と資金の実体験

製造業で独立しようと考えた時、まず気になるのは、

「いったいいくら必要なのか。」

ではないでしょうか。

加工業の場合、パソコン1台で始められる仕事とは違います。

機械が必要です。

工具が必要です。

測定器も必要です。

工場も必要です。

さらに、仕事を始めた後の運転資金も必要です。

私は2010年6月に、町工場を一人で始めました。

当時、用意できた資金は、

約1500万円。

内訳としては、借入などで1400万円ほどを集め、それとは別に自己資金が100万円ほどあったと思います。

正直に言うと、

自己資金はほとんどありませんでした。

それでも、何とかスタートしました。

この記事では、実際に私が何にいくら使ったのか。

中古機械を選んだ理由。

開業後に困った資金のこと。

そして、今ならどう考えるか。

16年近く町工場を経営してきた実体験として書いてみたいと思います。


目次

最初にそろえた設備

開業時に用意した主な設備は、次のようなものでした。

  • 中古マシニングセンタ 約300万円
  • 中古NCフライス 約250万円
  • コンプレッサー 約70万円
  • 測定機 約30万円
  • ハイスペックパソコン 約30万円
  • ボール盤 約20万円
  • 工具・刃物 約50万円
  • ツールホルダ 約150万円
  • 工場の改装 約200万円

これだけでもかなりの金額になります。

本当は、最初からワイヤー加工機とマシニングセンタをそろえたかったです。

でも、そんなに簡単にはいきませんでした。


最初の工場は「工場」ではなく、元は車庫だった

最初に借りた場所は、約150㎡ほど。

建設会社が使っていた、屋根付きの車庫でした。

2階に事務所がありましたが、1階はもともと工場ではありません。

自費で壁を作り、シャッターを付けました。

200Vを引くための電気工事もしました。

車庫なので、当然クレーンもありません。

エアコンを付ける余裕もありませんでした。

今振り返ると、よくそこで始めたなと思います。

でも当時は、

「ここでやるしかない。」

それだけでした。


一番お金がかかったのは、機械だけではなかった

加工業で独立すると聞くと、

「一番高いのは機械だろう。」

と思うかもしれません。

もちろん機械は高いです。

でも、実際に始めると、

工場を使える状態にするためのお金

もかなりかかります。

私の場合は、

  • 壁を作る
  • シャッターを付ける
  • 電気工事をする

といった改装費が必要でした。

しかも、機械を買えばそれで終わりではありません。

工具。

刃物。

ツールホルダ。

測定器。

こういうものを一つずつそろえていくと、どんどんお金が出ていきます。


リース審査は通らなかった

本当は、加工機をリースで導入したかったです。

しかし、リース審査は通りませんでした。

商社の紹介で2社に申し込みましたが、どちらもだめでした。

時期は、リーマンショックの後でした。

当時言われたのは、

「すでに事業をしている人たちでも資金繰りに困っている。」

「新規で開業しても、やっていけるはずがない。」

「失敗するに決まっている。」

というようなことでした。

今考えると、金融機関側から見れば当然だったのかもしれません。

実績もない。

仕事のあてもない。

自己資金も少ない。

そういう人に高価な機械をリースするのは、怖かったと思います。


だから中古機械で始めた

リースが通らない。

新品も買えない。

だったら、中古を探すしかありません。

そこで、

中古のマシニングセンタ。

中古のNCフライス。

この2台を中心に始めました。

ワイヤー加工機は後回しです。

中古機械を買う時に一番不安だったのは、

本当に精度が出るのか。

ということでした。

古い機械です。

故障した時に部品がないこともあります。

部品代も高くなるかもしれません。

実際、機械メーカーから、

古い機械なので故障時に部品がない可能性があることなどについて、承諾書を求められました。

それでも、中古で始めるしかありませんでした。


中古機械は「出所」が大事

結果的には、買った商社の方が悪い部品を交換してくれていたので、大きなハード面のトラブルはありませんでした。

ただ、操作やプログラム作成は大変でした。

今まで使っていた機械とは違い、古い機械なので操作方法も違います。

その勉強には苦労しました。

今でも私は、

中古機械は十分選択肢になる

と思っています。

ただし、

出所が重要です。

何を削っていた機械なのか。

10年落ちでも、昼勤だけだったのか。

昼夜ずっと動いていたのか。

実際の稼働時間はどのくらいなのか。

この違いは大きいです。

中古だから安い。

それだけで選ぶのは危ないと思います。


ワイヤー加工機は後回しにした

ワイヤー加工機を最初に買えなかったので、少し困りました。

外注先を探しましたが、当時は近くにあまりありませんでした。

ただ、実際にはマシニングの仕事の方が多かったです。

2010年6月に起業して、

2012年1月に新品の小型マシニングセンタ。

そして2012年4月に、念願だったワイヤー加工機を導入しました。

必要なものを最初から全部そろえたわけではありません。

仕事をしながら、必要なものを少しずつ増やしていった。

そんな感じです。


特殊な工具は最初から買わなくていい

これから一人で加工業を始める人に、

「最初から何でもそろえた方がいいですか?」

と聞かれたら、

私はそうは思いません。

マシニングセンタなど、絶対に必要なものはあります。

でも、特殊な工具や刃物は後回しでいいです。

あまり使わないものは高価です。

使用頻度も低いです。

実際、親切なお客様から、

「特殊な刃物だから貸しますよ。その代わり加工をお願いします。」

と言ってもらったこともありました。

最初から全部買うのではなく、

仕事が出てきた時に必要なものを買う。

この方が現実的だと思います。

最初、銀行へ行ったら門前払いだった

資金調達も簡単ではありませんでした。

最初、私はいきなり銀行へ相談に行きました。

でも、門前払いでした。

そこで地元の商工会議所へ相談に行き、起業セミナーを受けました。

最終的に用意したのが、

  • 父親の積立保険を担保に500万円
  • 親戚から200万円
  • 保証協会付きで銀行から700万円

合計1400万円です。

それに自己資金が100万円ほど。

合計すると、

約1500万円。

これが私のスタートでした。

父親には、私から相談した

もともと父親は、稼いだお金をあまり残すタイプではなく、貯金もほとんどありませんでした。

それでも、リース審査が通らず困っていた私が相談すると、父親は自分の積立保険を担保にして、500万円を用意してくれました。

私からお願いしたことでした。

今振り返ると、父親にとっても決して余裕のあるお金ではなかったと思います。

それでも力を貸してくれたことには、本当に感謝しています。

親戚からも200万円を借りました。

もちろんプレッシャーはありました。

でも、特に何も言わず貸してくれました。

今振り返ると、

周りの人にかなり助けてもらって始めた会社です。



1400万円集めても、運転資金は300万円しか残らなかった

開業資金として、私は約1400万円を集めました。

それとは別に、自己資金が100万円ほどあったと思います。

ただ、機械や工場改装などに使ったため、

開業時に運転資金として残っていたのは、

約300万円。

それくらいでした。

今なら、

少ないな。

と思います。

でも当時は、それで始めました。


材料を買う現金がないと、仕事ができない

開業したばかりの頃に、かなり現実を感じたのが材料代です。

最初は材料屋さんにも信用がありません。

掛けで買わせてもらえるわけではありません。

材料を注文するたびに、

その都度、現金を振り込まないと材料を買えませんでした。

つまり、

仕事が来た。

注文ももらった。

でも、

材料を買う現金がないと加工を始められない。

ということです。

これはかなり重要でした。

「仕事があるか」だけではありません。

その仕事を始めるためのお金があるか。

ここも大事です。


設備資金と運転資金、どちらが大事か

これは難しいですが、

私は、

どちらも大事

だと思います。

設備資金がなければ、そもそも起業できません。

機械がなければ加工はできません。

でも、

いざ起業した後は、

運転資金がかなり大事になります。

材料代。

電気代。

家賃。

工具。

修理代。

返済。

売上が入る前にも、お金は出ていきます。

機械を買うことばかり考えて、手元に現金が残らない。

これは怖いです。


月70万円売れれば何とかなると思っていた

最初の頃、

「月70万円くらい売上があれば何とか回る。」

そう思っていました。

でも、

達成できませんでした。

起業前は、

頑張れば何とかなると思っていました。

でも、仕事がなければどうにもなりません。

実際、加工だけでは厳しいと思い、

その後、私はロボットティーチングの仕事も始めました。

やはり、

起業時にお客様がいるかどうか

は大きいと思います。

最初から仕事を出してくれるお客様がいるなら、利益が出るまでのスピードは全然違うはずです。


事業計画書は作った。でも現実とは別物だった

開業前には、もちろん事業計画書も作りました。

金融機関から借入をするには必要だからです。

ただ、

計画書はプラスになるように作らなければ、そもそも借りられません。

だから、

計画上は売上が上がる。

利益も出る。

返済もできる。

そういう形にします。

でも、

現実はそんなに簡単ではありません。

仕事が来ない。

売上が上がらない。

想定外の支出が出る。

そういうことは普通にあります。

だから今なら、

収入予想はミニマム。

出費はマックス。

このくらいで計算する方がいいと思っています。



自己資金が少なくても起業できるのか

私は、
自己資金がほとんどない状態でも起業しました。

だから、
「自己資金が少ないから絶対に無理。」
とは言いません。

実際、私はそこからやってきました。

ただ、資金が少ないほど、材料代や修理代、売上が入るまでの期間に余裕がなくなります。

最近は、経営者個人の保証に頼りすぎない融資の考え方も広がり、以前より起業を後押しする仕組みも増えてきていると感じます。

ただし、制度は時期によって変わるので、実際に起業する時は金融機関や商工会議所などへ最新の制度を確認した方がいいと思います。

今なら、いくら準備してから始めるか

「2010年の自分に戻れるなら、いくら準備しますか?」

と聞かれたら、

正直、

できるだけ多く準備したい。

という答えになります。

お金は、あって邪魔にはなりません。

むしろ、

心の余裕になります。

ただし、

資金が十分たまるまで何年も待っていたら、チャンスを逃すこともあります。

だから、

「○千万円ないと絶対だめ。」

とは言い切れません。


機械を買う前に、まず確認すること

これから加工業で独立しようとしている人に、

「機械を買う前に一つだけ確認しろ。」

と言うなら、

まず、

中古機械なら出所を確認すること。

何を削っていたのか。

どのくらい動いていたのか。

昼勤だけなのか。

昼夜動いていたのか。

その履歴は重要です。

そして、もう一つ。

資金計画では、

収入予想は少なく。

出費は多く。

これくらいで考えておいた方がいいです。


町工場を始めるのに「1500万円あれば大丈夫」ではない

私は約1500万円を用意してスタートしました。

だからといって、
「町工場は1500万円あれば始められる。」
という意味ではありません。

機械の種類。
工場の広さ。
新品か中古か。
どんな加工をするのか。
仕事をすでに持っているのか。

条件によって必要な金額はまったく違います。

私の場合は、

2010年6月。
150㎡ほどの元車庫。
中古マシニングセンタ。
中古NCフライス。
自己資金はほとんどない状態。

そこからのスタートでした。

今考えると、かなり危なっかしい始め方だったと思います。

それでも始めて、ここまで続けてきました。

もし今、加工業で独立を考えているなら、機械の見積もりだけを見るのではなく、

「売上がなくても何か月会社を維持できるか。」

そこまで計算しておくことをおすすめします。

私なら今、

収入予想はミニマム。出費はマックス。

そうやって計画を立てます。

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